第5回
思いやりをもてるお子さんを育むための親子の会話
6年前、スマップというアイドルグループがうたった「世界に一つだけの花」という歌が、『オンリーワン』という言葉をキーワードに、大ヒットを記録したことを覚えていらっしゃるでしょうか。
このころのお母さんたちは、『ナンバーワンにならなくてもいい もともと特別なオンリーワン』という歌詞の中に、他人との競争よりも子どもの個性が大切だと、ご自身の子育てを重ね合わせました。
まもなく、保育園・幼稚園の入園であわただしい春がやってきます。保育園や幼稚園は、お子さんたちにとって、お母さんから離れた中で、初めて体験する「社会」への入口になる場所です。
子どもたちが、これから、その社会に歩みだすとき、お子さんが(あなたにとって)唯一の存在であるように、園生活の中でも、オンリーワンでいてね、と、たくさんのお母さん、お父さんが願うことでしょう。
そのように個性を尊重し、お子さんを認めてあげられることは、子どもたちは気持ちをつよくします。
でも時がきたら、子どもたちも、自らが、まず相手を受け入れ、そこから、自分が認めた相手に対して、今度は、自分のことを受け入れてもらえるように、努力を怠らない気持ちをもってほしいものですね。
今、子どもたちは、小学生にもなるとすぐ、ひとから、「認められたい」、「自分の話を、自分と同じ立場にたって聞いてほしい。(でも、どうせ聞いてくれない!)」、「学校の中でも、唯一の存在である“私”に気づいてほしい。(でも、どうせ気づいてくれない)」と、“どうせ、どうせ”と訴えてきます。
むかし、『透明の存在』という、子どもが、自分たちのことを表した言葉が流行ったこともありました。確かに、そこに(自分は)いるけれど、「誰にも見てもらえていない(分かってもらえない)」と言うのです。この、子どもたちの主張は正しいように映ります。たしかに、正しい部分もあることでしょう。
しかし、社会の中で受け入れられるということは、子どもに対する親の「無償の愛による認知」とは、全く違います。 何もしないうちから、子どもたちが社会に対して、オンリーワンにふさわしく、自分を迎え入れろと訴えかけても、すべてを受け入れてもらえるわけではありません。
社会に生きるとは、支え合う相手があってのことであり、存在の主張や、言葉の主張というものが、自分だけの(一方通行の)視点から語ってしまうと、気持ちが届かない中身のないものとなってしまいます。
子どもの想いが、「自分だけの視点」によるものにならないためには、子どもが、これから感じていくこと、うれしいことも、悲しいことも、怒ったことも、自己完結させずに、幼稚園や保育園のうちから、できる限り、親に話して、会話をして、一緒に昇華していく習慣が必要になってくると思います。
子どもに、大人が聞いて理解できる程度の話し言葉が増えると、ぐっと親子の会話が減る、という統計があります。それまで、何を言っているか聞いても分からないけど、その分、親も懸命に汲み取ってあげようとする気持ちがあったものが、子どもの、話し言葉の中の情報量がぐっと増えるにつれて、無意識に「聞いたつもり」になるといいます。
保育園・幼稚園に通っていると、お子さんの中で印象に残った事柄は、親がだまっていても話をしてくれますね。ぜひ、これからは、お子さんの言いたいことを聞いてあげると同時に、何気ない日常の、その時々に感じたことを、親から掘り起こして訊いてあげるようにしてみてください。最初は根気がいりますが、きっと、思わぬ発見があって、親子の関係がよりよく変わっていくことを実感できると思います。
著者:遠藤ノボル
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保育士・ボディワーカー。
東京都八王子市の子育て応援NPO 保育所風の子 代表理事。
子どもたちの安全を守る乳幼児向け応急手当プログラムに通じると同時に、
積極的に子どもの心とカラダの健やかな育ちを促すために必要な、
子育てのあり方を求めて、生理学・整体を学び、
「目の前にいる子どものありのままを見る」ことを大切にした保育を行なう。
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